昨日の続きです。
日常生活のしんどさや自分の体の不具合を正直に伝える前に、強がってしまうことが多いのです。
私が担当した方々の中には、私の家族と同様に子どもたちが近くにいない高齢者も多くいらっしゃいました。
いざとなった時、親子それぞれが情報量不足からのスタートでは間に合いません。
親がある程度高齢になった時、元気なうちにこそしっかりと話を聞いておく必要があります。
残念ながら「その時になれば何とかなる」というわが国の状況では既にありません。
実は昨日も、最近来院できてない高齢のご婦人に電話をしてみました。
すると、介護の状態にあった90歳の夫が4月当初に脳梗塞を起こし、入院していたのでした。
これまでご近所にもひたすら内緒にしてきたようです。
電話にご婦人の嗚咽が聞こえてきます。
子どもさん達は、大阪と神戸でご家庭を持っておられます。
夫は近所の中堅病院で救命医療を受けましたが、とりあえず回復し現在は老人を多く受け持つ病院に転医しました。
しかし会話もできず嚥下不能となっています。
息子さんや娘さんはお越しになられたのですか?と尋ねますと「面会には来ています」とのお話。
「息子や娘の顔はわかるみたいですよ」
何とか表情などでコミュニケーションを取れる状態だそうです。
このご婦人は電車とバスを乗り継いで、毎日1時間ちかくかけて面会にいかれているようです。
本当にこのような例にたくさん出会ってきました。
例えば、私たちの例を考えましょう。
私が介護の段階になり、仮に息子に呼ばれて東京に行こうと計画したとします。
でも、そこには越えなければならない大きな問題があるのです。
実際に私の担当した患者さんの例が大変参考になります。
娘さんは、一人暮らしのお母さんのために、月に1回は介護休暇をとって東京から飛行機で和歌山県の自宅に帰っていました。
お母さんの状態の確認と様々な行政の手続き、お薬の管理などを行うことが必要なのです。
しかし、やはりお母さんの介護の状態がだんだんと難しくなり、娘さんはお母さんの自宅での生活が厳しいと判断されました。
そこで、自分の住まいに近い東京の介護施設に入居してもらおうと計画したのです。
ところが、その介護施設の空きがなく、約1年以上介護施設を探し続けることになったのです。
その間に私たちも訪問させていただきながら、お母さんのリハビリなどを行っていました。
ところがある日突然連絡があり「東京の施設が見つかったので、急遽転居することになります」との事でした。
知人への挨拶などは後回しにして、急いで引っ越して行ってしまわれました。
都市部への高齢者の転居(介護施設への入所など)については、このような現実があるのだということを知っておく必要があります。
ずいぶん長くなってしまいましたが、ある程度の年齢になれば、早い段階で子供たちは高齢の親たちとのコミュニケーションを十分に取っておくことが必要です。
また親の側からすれば、元気な時にこそ、高齢になった時どのような生活を自分が希望するのか、子どもやお世話になる方々にしっかりと伝えておく必要があると思います。