昨日の続きです。
お産の保険適用について、いろいろな壁があることがわかってきました。
高額なお産費用を必要としている病院からは「お産医療の質の低下」を危惧する声が出ていると紹介しました。
一方で近年、負担軽減を求める声が強まってきているのも確かなのです。
昨年4月に民間団体「子どもと家族のための緊急提言プロジェクト」が実施したネット上でのアンケートでは、50万円以内に出産費用が収まった人は22%しかありません。
「お金が足りなかった」「高い理由がわからない」といった声が寄寄せられているのも現実です。
保険適用に関しては、持病のある妊婦らの分娩を守ることも考える必要があります。
大阪大の木村正教授(産婦人科)は、大阪大医学部付属病院のハイリスク分娩のための体制維持のコストは、1分娩あたり約120万円だと説明しています。
この病院では、危険な状態の妊婦の最後のとりでとなる「総合周産期母子医療センター」の機能も受け持っています。
休日や夜間も産婦人科医2人、麻酔科医と小児科医も常にしています。
ただ同センターへの補助金を受けても自然分娩は「相当額の赤字」となっています。
本来は、リスクの低い分娩は診療所や産婦人科のある病院で出産し、ハイリスク分娩は同センターで出産するといった「役割分担」が理想なのです。
しかし、医師の高齢化や少子化などで、全国で分娩を扱う診療所は06年の1818カ所が22年は38%減の1135カ所になってしまいました。
少ない常勤医で24時間体制を維持する地方の病院も多く、産科医は他部門より当直回数が増える傾向にあります。
木村教授は「10~20年したらもっと地方のお産は変わる。先の全体像まで見通して保険適用を議論しないと大混乱のもとになる」問題提起をしています。
戦後、都市部で病院や診療所での出産が増えました。
一方、地方は家族や近隣の人らが多くを担うところもあり、出産の仕方が混在しており、全国一律のルールでの保険診療の導入が困難だった背景があります。
その当時から保険適用の議論は浮上しましたが、厚生労働省は「正常(自然)出産は疾病やけがではない」との考えをとっていました。
しかし、お産を取り巻く状況は大きく変化をしました。
厚生労働省も、従来の考え方を訂正しなければならない状況となっています。
この際ですから、比較のために海外のお産の状況について少し調べてみたいと思います。
現在の日本からは想像もできない「恐ろしい」お産の実態が明らかになっています。
つづく