昨日の続きです。
お産にはずいぶんお金がかかるということがわかってきました。
もう少し具体的に見ていきたいと思います。
特に今は都市部を中心に出産費用が高騰しています。
既にご紹介しましたが、出産育児一時金は今春に50万円へ増額されましたが、それでも足りないケースは当然あります。
そのような背景もあってか、国は2026年度からの「出産費用の公的医療保険の適用」を検討し始めています。
「お産に保険が適用になるのはありがたい!」という歓迎の声が上がる一方で、それを疑問に思う声も上がっているのです。
保険適用はありがたいはずなのに、一体どういうことなのでしょうか?
保険が適用になれば、今は医療機関が自由に決められる費用を一定の枠内に抑える効果があるのではないかと言われています。
しかし、一方でサービス低下につながるおそれも指摘されているのです。
例えば、6月から出産費用を値上げした関東地方のクリニックがあります。
値上げは12年間で3回目です。
このクリニックの自然分娩(ぶんべん)は60万円を超えています。
「光熱費や助産師などの人件費、医療器具の高騰、車より高い医療機器の更新、機器の点検費……。物価高騰は国の責任なのに、なぜ保険適用なのか」
院長は疑問に思っています。
このクリニックでは年間700件の分娩があるといいます。
そのうち4割はお産の痛みを和らげる無痛分娩です。
無痛分娩には、麻酔科医や麻酔経験のある産婦人科医をそろえるため、人件費も高くなります。
皆さんもご存知の通り、出産費用は現在、医療機関ごとに設定できる自由診療です。
これが保険適用になれば、全国一律の基準となります。
政府には保険適用で、高騰する費用負担を抑える狙いがあります。
しかし保険適用となり、一律の費用が低く設定されるどうなるでしょうか。
院長は・・・
「入院が1日短くなったり、食事の質を落としたりすることも起こりうる。妊婦と赤ちゃんを守る医療機器の更新ができなくなる」と語ります。
費用が高額な病院の一つ、聖路加国際病院(東京)では、自然分娩だとなんと95万~120万円の費用がかかります。
無痛分娩の場合は15万円が加算されます。
同院の助産師は約50人で、一般的な病棟の1・5倍以上の水準を保っています。
人手を増やして高い安全性を売り物にしています。
出産は全員、陣痛から出産まで同じ個室で過ごせます。
安全性が高いという理由で35歳以上の高齢出産が6割をこしています。
例えば、がんの治療をしながら出産する妊婦もいるのです。
同院の女性総合診療部の医長、山中美智子医師は、こう語っています。
収益の多くは人員の確保に充てられているので、万が一保険適用で収入が減ることがあれば、「安全性の担保ができなくなる」可能性があるといいます。
「出産に関わる最小限の医療費を保険対象とし、無痛分娩の費用などは各病院が設定できるようにすれば、現状を維持できる可能性があるかもしれない。」
しかし、保険適用の診療と保険が適用されない診療を組み合わせる「混合診療」は原則認見られておらず、実際はそう簡単ではないと言います。
つづく