昨日の続きです。
もう少しトリチウム話が続きますので、お付き合い下さい。
福島原発から排出されるトリチウムの危険性がおわかりいただけたかと思いますが、今までの話は原則として無機のトリチウム水の扱いについてでした。
これが有機のトリチウム水となると話はまた変わってくるのです。
岩倉政城さんという歯科医師の方が放出されるトリチウム水について疑問があり、東京電力の資料を調べたそうです。
これまで紹介したように、国や東京電力は東京電力福島原子力発電所事故で生じた汚染水は多核種除去設備で放射性核種を除いてタンクに収めているとしています。
除去できないトリチウム(水素の放射性同位元素)は海洋に流しても魚介類に濃縮は起こらないから危険は無視できると説明されてきました。
岩倉政城さんがタンク内成分を知ろうと東電資料を調査したところ、タンクの錆、液漏れや硫化水素の発生対策のために調べた汚染水サンプル成分表を発見しました。
その中になんと、細菌や有機物が検出されたとの表記が見つかったのです。
無機のトリチウムはトリチウム水の形で存在し、化学的に水と同じ挙動をします。
魚介類に入っても生体内半減期は12日で蓄積は微量です。
しかし有機になると魚介類は栄養素として選択的に取り込み、体の構成成分になってトリチウムの濃縮が起こります。
生体内半減期も一気に40日〜1年になります。
汚染処理水を海洋放出することは沿岸漁業者に打撃を与えるばかりでなく消費者の私たちにも影響が及んで来るのです。
東電は汚染水の海洋放出は無機のトリチウムだから魚介類に蓄積しないと言います。
しかし有機結合型トリチウムを放出したイギリスの例ではヒラメから1万6千Bq/kgの高濃度汚染魚がみつかりました。
有機物になったトリチウムがプランクトンに入り、それを魚が食料とします。
必然的に吸収して体成分にすることで高濃度汚染魚になります。
これは実害であり、もはや「風評被害」では済まされません。
これまでのブログの中でも紹介しましたが、半減期が1000万年となるような微量の放射性物質も放出されています。
それが長い長い食物連鎖の過程でどんどん蓄積されていく事は容易に想像できます。
100年後、200年後、もっと将来の地球上の生物や人類にとって影響与える事は確かでしょう。
今からでも遅くはありません。
海洋放出を一旦中止にする必要があります。
その際に、例えばアメリカのスリーマイル島原子力発電所事故の際にとられた水分を飛ばして汚染水濃縮の後、モルタル固化などの技術と経験に学び新たな方法を生み出す必要があるでしょう。
つづく