前回の続きになります。
日赤病院を出て、叔父の家まで向かいますが、大体30分はかかるでしょう。
ナビを見ながら走り、何とか叔父の家にたどり着きました。
玄関先に回ると、テレビの「警察24時」などでよく見かける鑑識班が5人、例の服装と装備で待っててくれました。
早くしないと日が暮れるので、早速取り掛かりました。
リーダーと思われる方から説明を受けました。
もう既に病院に赴いて、叔父の遺体全体を調べ、事件性がないかどうかを確認しているようです。
「右手の甲に擦り傷がありましたが、後は全く怪我らしいものはありませんでしたし、綺麗な状態でした」との事。
叔父は、玄関前で右を下にして倒れていたということです。
救急隊が駆けつけたときには、まだほんのりと体に温かみがあったといいます。
そして足元には今日の朝刊が落ちていたそうです。
玄関の引き戸は半分開いたままになっていたそうです。
そして、その方が大体の予想を話してくれました。
「おそらく叔父さんは、新聞を取りに朝外に出て、そして倒れたのでしょう」
なるほどと納得する推理です。
早速、家の中に入り、施錠の確認や部屋の中が物色されていないか、貴重品等が盗まれていないのかの点検です。
見ていると、鑑識の人々の目のつけどころの鋭さが分かります。
あれはあれよと言う間に、貴重品の入った袋や現金の入った財布を見つけ出してきます。
私に探せと言われても、とてもこのスピードで、重要書類などを見つけ出すことはできないでしょう。
作業しながらお話ししてくれましたが、最近独居の高齢者の死亡が多く、このような事案もずいぶんあるということです。
「お一人で暮らしておられたにしては、本当にきれいに片付いておりますよ」
いくつか見つけた預金通帳や現金等ははすべて写真に収めます。
通帳の中身も確認します。
つまり、最近目立って大きな金額が引き出されていたりしていないかを見ているそうなのです。
驚いたことに、鑑識のリーダーが単車の免許証(叔父はバイクにしか乗れませんでした)を開いて見せてくれて、「なぜだかわからないのですが、生年月日が1日違うんですよ、ホラ!」
なんと、そんなとこまで瞬時に確認できるのか!
正直言って驚きました。
すべての部屋をこんな形で確認し、ようやく一段落しました。
「一応、仕事柄、救助に関わってくれたご近所の方にもその時のご様子を伺っております」との事でした。
(これはこの後ご挨拶に伺わないといけないなぁ、かえってご迷惑をかけてしまったのではないかと内心焦りました)
結局、午後4時半ごろに総合的に判断して「事件性は無い」という結論を現場から日赤病院の医師に連絡を入れます。
この過程を経て、初めて死体検案書が発行される段取りとなるのです。
この後すぐに第一発見者のお隣のご婦人にお会いすることになるのですが、彼女自身が、何やら不思議な巡り合わせを語ってくれました。
つづく