元のテーマに話を戻したいと思います。
うちの親父はくくり罠の免許持っていました。
罠を仕掛けるのですが、それが家から目と鼻の先のとこに仕掛けるのです。
罠はわからないように軽く土をかけて隠します。
そのかわり、間違って人が踏まないように、警告板を近所に、何枚も貼っておかねばなりません。
家の庭を猪が通っているような状況ですから、猟場はすぐそばでした。
それでも結構器用だったのか、いつでも専用の冷凍庫は、鹿の肉や猪の肉で満杯の状態でした。
ところが、くくり罠では子供の猪までかかってしまいます。
あまりに小さいので、今度はその猪を飼うことまで始めてしまいました。
約20畳の広さのセメントを打って床を作り、ブロックを自分で積み上げて1・2メートル位の高さの壁を作ります。
その上には、高さ2メートル位まで頑丈な金網をかけて天井も覆ってしまいます。
中には、水飲み場、餌場などを作って、籾殻などを敷いておきます。
猪という生き物は、本当に危険です。
1度野生で育った猪は、小さくても人間にはなつきません。
いつも三頭はいましたが、人間を見ると飛びかかってきます。
壁を駆け上がり天井まで体をぶつけてしまいます。
天井を塞がなければいけないのは、そんな理由があったからです。
100キロ近くの猪が人間を襲うことなんて、ほんとに朝飯前の事なのです。
猪がくくり罠にかかれば、当然逃げようとします。
走るスピードも相当速く、助走が3メートル位もあれば、最高速度に達すると言われています。
ですから、くくり罠の長さはできるだけ短くなければなりません。
例えば、80センチのワイヤーだとすれば、反対側に引っ張って走り込まれると、160センチ走ることになります。
長ければ長いほどワイヤーに負荷がかかり危険性が高まります。
親父の設置する罠は大体長くて50センチ位だったと思います。
猪が罠を踏むと20センチ位跳ね上がりワイヤーが締まりますが、浅いと当然逃げられます。
この動力源はワイヤーの周りにぐるりと巻かれた強いバネで1メートルを超えるものを25センチほどに圧縮するのです。
罠はそこそこの高さに、飛び跳ねてくれなければならないのです。
罠は、外れないように、太い木などにくくりつけていますが、猪がかかれば、そのポイントを中心に、まるでコンパスで円を書くように、地面をブルドーザーのように掘り起こしてしまいます。
全くすごいエネルギーです!
では、最終的にこの猪をどのように倒すのかです。
今では電気ショックを使い、倒してから「止め刺しと放血」もするようですが当時はそんなものもありませんでした。
親父の場合は、猟友会会員に頼んで撃ってトドメを指すことがほとんどでした。
ただ、これをすると、ものすごい銃声が周囲に響き渡ります。
そうすると、当然、近所の人たちが集まってくることになります。
猪を見たいのはもちろんなのですが、お目当ては「猪肉」のおすそ分けに間違いありません。
田舎の人は「猪肉」大好きですからね!
つづく