hayatouriの日記

はやとうり の独り言

安楽死について考える その3

昨日の続きです。

 

ポストマ医師への積極的な支援運動を始めた多くの開業医たちがいました。

 

彼らは「私も今までに少なくとも一回はポストマ医師と同様な罪を犯している」という公開状に署名して、法務大臣に提出します。

 

このような社会状態の中で、自発的安楽死は、ますます社会的関心事となって行くのです。

 

1973年に、レーウワーデン裁判所で、ポストマ医師に対して、オランダ刑法第293条違反として「一週間の懲役並びに一年間の執行猶予」の判決が下されました。

 

本裁判において、「レーウワーデン安楽死容認四要件」が認定されたのです。

 

①患者は、不治の病に罹っている。

②耐えられない苦痛に苦しんでいる。
③自分の生命を終焉させてほしいと要請している。
④患者を担当していた医師あるいはその医師と相談した他の医師が患者の生命を終焉させる。



「ポストマ医師を救う運動」に始まり、彼女の有罪判決直後には「オランダ自発的安楽死協会」が設立されます。

 

そして、「刑法293条を改正して、医師による自発的安楽死の実施を法的に容認する」という法律改正運動を開始しました。

 

一方同じころ、法律家のファン・ティル博士が中心となって、「自発的安楽死財団」を設立します。

 

この財団では、自発的安楽死を強く求める患者たちに「良い死の迎え方」の援助をしました。

 

一方、患者を無理に安楽死をさせることがないようにするために、理論的・学問的に良い方法を模索する学者たちの頭脳集団となるのが目的でした。

 

多くの図書などの出版活動も行い、次第に学問的な信用もついて、裁判所や政府機関などでも、これらの出版物を参考にするようになっていったのでした。

 

さらに、1973年には王立オランダ医師会は、次のような声明を出しました。

 

安楽死は、法的には犯罪であることには変わりはないが、もし医師が、ある患者の症例について、あらゆる面から検討した結果、不治の病にかかって死を目前にしている患者の生命を短縮した場合に、裁判所は、医師の行為を正当化しうる『医師としての義務の相剋』があったかどうかについても裁判するべきであろう

 

この前にも紹介したように、オランダの「かかりつけの医師」制度となっています。

 

つまり医師は、患者の病状のみならず、長年の精神状態の変化やそれらの原因や理由などについても精通し、よく理解しているはずです。

 

自分の「掛かりつけの医師」を信頼し、生命を預けて依存している患者自身が、人生最後に当たり、法を犯してまで楽にして欲しいと頼って来ています。

 

その患者のことを知り抜いている医師は、自分を頼りすがってくる患者の切なる願いを無視して、患者を裏切ることはできないと考えるのも当然でしょう。

 

つづく