昨日の続きです。
これまで、オランダにおける安楽死と向き合う歴史を見てきました。
実際日本でも「安楽死」を巡る、様々な問題が起きていますね。
2020年、安楽死を望んでいたALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性患者を2人の男性医師が死に至らしめるという事件が発覚し、医師らが逮捕された事件は記憶に新しいと思います。
報道によると、患者と医師はSNSで知り合い、さらに患者が医師の口座に150万円前後の金額を振り込んでいたといいます。
この事件は「安楽死」にあたるのか「殺人」または「自殺幇助」かが問われ波紋が広がっています。
今のところ日本で安楽死は法律的に認められていないが、潜在的な社会的関心は大きいといえます。
実際日本人が外国での安楽死を選択するケースもあるのです。
現在、安楽死を望む人やその家族に対する情報提供などを行ってきた大規模な市民団体、NVVE(オランダ自発的生命の終結協会)というものがあります。
まず、簡単にNVVEという組織について見てみましょう。
現在、NVVEの会員数は17万3000人で、そのほとんどが70歳以上です。
そのため、毎年約1万1,000人の会員が減少しているが、新しい会員も同時に増え、成長を続けています。
当然のことながら安楽死や自殺の話題がニュースになると問い合わせの連絡が増えるようです。
NVVEの運営資金は基本的に年額23.30ユーロ(2022年5月末現在、日本円で3,000円程度)の会費と遺産、寄附によって成り立っています。
オランダでは、2002年4月1日に、「要請による生命の終結および自殺幇助(審査手続き)法」が施行されました。
本法は国家の法としては世界初の安楽死法でした。
この安楽死法がスタートしたとき、安楽死幇助が激増するのではと危惧した人がいましたが、制度上医師は安楽死に対する協力を拒否することができます。
2021年に医師に安楽死を依頼した人は16,000人と推定されていますが、実施されたのは7,666回でした。
安楽死をする人の70%以上はがんで、しかも人生の最終段階にある人達です。
オランダでは制度があるとはいっても安楽死は易々と行えるものではなく、厳格なプロセスを経なければ遂行することはできない制度設計になっています。
これまで調べてきたように、数多くの裁判が行われ、患者や医師、裁判所等の法律関係者、国民がずいぶん時間をとって議論を含めてきた結果といえます。
認知症を理由に安楽死を実施したのは215件
2021年のRTEの報告書によると、円、グラフのように安楽死をした人の疾患で最も多いのはがん、次いで神経系疾患、心臓・血管系疾患、肺疾患、老化、認知症、精神疾患となっています。
つづく