昨日の続きです。
前回のブログの中で、安楽死を選択した人たちの疾病をついて統計が出ていました。
安楽死の要件のひとつに「絶望的で耐え難い苦しみがある」が挙げられます。
では、認知症の人にとっての耐え難い苦しみとは一体どういうものなのでしょう?
それは医師が定義するものではなく、患者本人が意思表示をするものらしいです。
条件は人によって異なりますが、その一例として「失禁し、無力になるなど、非人道的な状況に陥ることでしょう」ことに対して、耐え難い苦痛を本人が感じている場合などが対象になるようです。
私の疑問は、患者本人の意思表示がしっかりとできるかどうか、それを周りがどう判断するのかというものでした。
調べてみると2020年、オランダでは重度の認知症になり意思表示ができなくなった場合においても「患者がまだ判断能力を有していた時期に作成された書面による事前指示書があれば、安楽死を施しても医師は追訴されない」ことになりました。
これは、2016年に安楽死を実行した女性医師の裁判によって示された判断です。
事件について簡単にご紹介します。
介護施設に入居する前、「安楽死を希望する」旨の文書を残しており、そこには自ら心構えができたと宣言した場合のみ、と付記されていました。
医師は患者の入居前に「安楽死はこの文書に基づいて行うべきだ」と考え、他の医師2人もこれを確認しました。
医師は安楽死を実施した当日、鎮静薬を入れたコーヒーを飲ませました。
昏睡する患者に医師が安楽死の処置を行うための注射をしようとしていた矢先、患者の女性が覚醒してしまったのです。
安楽死が確実に遂行されるまでの間、親族は女性を押さえつけていたといいます。
裁判で検察側は、医師が患者と十分な相談をしないまま処置を行ったと主張。
しかし女性の家族は医師を擁護し、結果的にこの医師は無罪判決を受けるに至っています。
ここまでオランダでの様々な裁判の経過や、安楽死に対する社会の動向をご紹介してきました。
少し方向性が見えてきたのは、自分はどのように生きてどう最後を迎えるのかは、基本的に、その人が自分で決めたことが尊重されなければならないということだと思います。
私も、自分の両親や身近な人たちをずいぶん見送ってきましたが、今では日本の病院でも「最後の段階で延命治療を希望しますか?しませんか?」と高齢者はくどいほど聞かれると思います。
安楽死や尊厳死の問題は、この質問のすぐそばにある問題ではないかと思います。
次回、最後に少しまとめ的なブログにしたいと思います。
つづく