昨日の続きです。
遺体の「完全炭化」はなぜ起きたのでしょうか?
ジェット燃料(ケロシン)は、ガソリンよりも、はるかに火力の弱いいわば灯油に近いようなものです。
考えてみてください。
湿った地面に遺体が落ちて、例えば灯油をかけて燃やした場合にカリカリに炭化しますか?
ありえない話です。
どうしても地面に接する部分は焼け残るはずです。
一体どうすれば、このように完全な炭化が起きるのか?
これまでも登場した青山透子さんは、現場を訪ねて123便の金属のかけら(と思われる)を入手します。
それを自分で費用を出し、きちんとした分析で評価の高いT大学工学部にて、金属の専門分野における学術研究として、専門の技術者に依頼をして組織分析を行ったのです。
客観性を担保するため、技術者の方には採取場所の情報は伏せたまま分析をしてもらいました。
いずれも、石ころのようなものでしたが、どうやら金属がドロドロに溶けた状態となって、それが固まったものであることが明らかになりました。
アルミニウムの合金の可能性が高く、航空機の材料と判断できるものです。
それでは表面には何が付着しているのでしょうか?
様々な物質があぶり出されましたが、なんと硫黄とベンゼンが多く検出されました。
結論として最も問題になったのはこのベンゼンの存在です。
ジェット燃料のケロシンや灯油は、炭素が直鎖状につながったもので、それらにはベンゼン(炭素が六角形状になったもの)は含まれないのです。
つまり、ジェット燃料に含まれていない大量のベンゼンがジュラルミンに付着していたことが明らかになりました。
そして、そのベンゼン環はガソリンに含まれています。
これらの結果から結論をまとめると次のようになります。
上野村の墜落現場に「ベンゼン」という物質があった、それはジェット燃料に含まれているものとは異なり、ガソリンに含まれているものです。
かなりの量のベンゼンが含まれていることから、大量のガソリンが使用されたと考えられます。
次に硫黄ですが、これもかなりの量が付着していました。
航空機に使用される超ジュラルミンの融点は、約650度です。
これまで多くの航空機事故がありました。
火災の起こった事故もありますが、焦げたり焼けてるしていますが、機体部分は溶けてはいません。
研究機関に持ち込んだ、このサンプルは明らかに溶けていたのです。
事故現場にいち早く入った消防団の皆さんの証言では「ガソリンとタールの匂い」がしたといいます。
硫黄とベンゼン、こういうものが入っている燃焼促進物質は何なのか?
ここからは使用されたであろう燃焼促進物質を突き止める作業に入るのです。
つづく