昨日からの続きです。
課税事業者からすれば「仕入れ税額控除」のできない業者との取引をしたがらないのは当然といえます。
例えば所得税は収入から経費などを引いて残った所得に税率をかけるものです。
収入が低かったり、経費が多くなれば当然納税額も低くなります。
しかし消費税はそうではありません。
仮に所得税がわずかであっても、売り上げがあれば消費税は発生します。
弱く小さな事業者に消費税の納税を迫るというのがインボイス制度の本質です。
こういう点をまずは説明させていただいた上で話を進めていきます。
さて売り上げが1000万以下の事業者を正式には「免税事業者」と呼びます。
この方々は現在まで消費税を納めなくても良い事業者であり、大体500万事業者がいると言われています。
一方で消費税を納める売り上げ1000万円以上の課税事業者の数は300万事業者と言われています。
財務省の試算ではインボイス制度が始まって免税業者から課税事業者になる数は500万事業者のうち160万業者と言われています。
ここから得られる税収が2480億円、単純に割ると1事業者平均15万円円の増税になります。
現在(今年の2月時点)インボイス制度に登録した事業者数は合計800万事業者のうち28万事業者でわずか3.5%しかありません。
ですが登録の締め切りは来年の3月になっています。そしてスタートは10月からとなっています。
制度の作りとしては大変粗っぽい作りになっています。
フリーランスの人口は1577万人と言われていますがこれらの8割の方が免税事業者です。
日本商工会議所の出しているデータを見てもインボイス制度導入への準備状況の中で「準備ができている」という事業者は全体の6.4%でしかありません。
60%の事業者は「特に何もしていない」と回答しています。
総じて約9割は準備ができていないし情報も得ていない実態が明らかになっています。
そんな「難しいインボイスを選択しなくて免税事業者のままでいればいいじゃないか」と声もありますが、ここには大きな問題が潜んでいます。
前にもご説明しましたが発注者はインボイス制度開始後にも免税業者(インボイス番号を貰わない)に仕事や仕入れを発注するのでしょうか。
課税業者にこの質問をぶつけているアンケートがあります。
課税業者の20%は免税業者には仕事を発注しにくいと答えています。
これはよく考えれば中小事業者やフリーランスの方々に2つの選択を迫っていることになります。
まず第一に売り上げ1000万円以下であっても自ら進んで課税業者となりインボイスの登録番号をもらう代わりに消費税を納める選択。
第二の道はインボイスに登録せず免税業者のままで営業を行うが取引先を失う可能性が高いという選択。
どちらを選んでも売り上げや収入の減少は避けられないような選択肢となっています。
さらにこういうことも起こります。
例えば、あるフリーランスの方が課税事業者となって登録番号をもらうとします。
当然消費税は払わなければいけません。
なので自分の必要とする経費にはインボイスの登録のある事業者やフリーランスの方のものしか使ったり買わなくなってしまう、という事業者間の「差別化」を起こしてしまうということです。
つまり仕事の発注や仕入れに対して、そのクオリティーで考えるよりはインボイスの有る無しで発注先を考えてしまうようになりかねません。
今、いかにも拙速なインボイス制度導入に対して中小事業者やフリーランスの方々の疑問の声と反対運動が巻き起こっています。
このインボイス制度が導入されると市中(特に経営体質の弱い中小事業者、フリーランス)から2500億円以上の消費税が吸い上げられます。
そうなれば経営が続けられず廃業や閉店に追い込まれる中小事業者も増えると思います。
今いちど立ち止まって考えてみる必要があると思います。