昨日の続きです。
お互いに「こんなところで会うなんてね」などと話しながら、絵を鑑賞したのです。
なんだか周りにはいつまでたっても来場者が現れませんでした。
鍼灸学校に通っていることも事前に知っていてくれたようです。
「私は膝が痛いので、◯◯ちゃんが免許とってくれば治してもらえると喜んでいるんよ」
(ちなみに私は子供の時と同じように◯◯ちゃんとおばちゃんに呼ばれていました)
と話していた声を今でも鮮明に思い出すことができます。
その当時もおばちゃんは一人暮らしをしていました。
一通り絵画鑑賞をしたあと「では体に気をつけて」と挨拶をしてお別れしました。
それから何日かして・・・・
大阪で暮らしていたワンルームマンションに夜電話がかかってきました。
電話の主は声を落として私に伝えました。
「おばちゃんが亡くなった・・・」
話をまとめると、おばちゃんは家から少し離れたところに梅の畑を持っていました。
消毒や剪定、梅採りなども誰かに手伝ってもらいながら一人で切り盛りしていました。
ある時、その隣に畑を持っていた男性が梅の木にもたれかかって亡くなっているおばちゃんを発見したのです。
夕陽を眺めるように座っていたので、後から声をかけたのですが返事がなかったので気づいたようです。
死後24時間程度だったそうです。
手元には携帯電話を落としていたようで、体の異変に気づいたのか誰かに電話をしようとしていたようです。
後日、おばちゃんの親戚の人たちに聞いたところ、他の人には言わなかったみたいですが心臓病の薬が家には残されていたようです。
私は電話を握ったまま何とも言えない虚しさを感じていました。
美術館でおばちゃんから頼まれた治療の仕事をする前にこの世を去ってしまったのです。
後になって考えれば、帰省したときに突然「美術館へ行こう」とどうして思ったんだろうと不思議でなりません。
たとえ美術館に行ったとしても、ほんの何分か違っただけでおばちゃんと遭遇する事は無いのです。
偶然だと言ってしまえばそれまでですが、あの時ばかりは何か見えない力が、最後におばちゃんに会わせてくれたのかもしれないと思っています。
次回はもう一つの不思議な出来事についてお話ししたいと思います。
つづく