昨日の続きです。
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」のお話でしたね。
顔でないものが顔に見えるものの例として、「心霊写真」や「人面魚」も挙げられます。
これらの正体もパレイドリア現象ではないかと言われています。
もやもやとした、特定の形をなさない模様が何に見えるかというのは、見る人によっても異なります。
例えば月のクレーターは日本ではうさぎに見えると言われます。
しかし、地域によってはロバに見えたり、本を読むおばあさんに見えたりするそうです。
同じ『月』を見ていても、いろいろなものが見えてしまうのは、パレイドリア現象の面白いところです。
実はとても身近なパレイドリア現象。
このように、私たちの暮らしに密接した心理現象や心の働きを明らかにするのが「認知心理学」です。
『認知』というのは、何かを認識したり、理解したり、選んだり決めたり行動したりする時の心の働きだともいえます。
一見哲学の範疇のようですが、認知心理学のポイントは実証、つまり実験を通して分析することにあります。
例えば立命館大学では、知覚(どのように見えるのか、聞こえるのか)と運動(どのように体を動かすのか)、思考・推論(どのように考えるのか)、さらには感情や好みなどの関係を実験を通して確認していきます。
パレイドリア現象の研究でも、たくさんの実験が行なわれています。
たとえばパレイドリア現象によって何が観察できるか、といった実験があります。
顔以外に動物、空想上の生物、物体、幾何学模様などいろいろなものが挙げられましたが、突き詰めた結果、8割以上の回答が顔や生きもの(動物)でした。
また、視覚検出課題という専門的な方法を使った実験では、まったく同じものを見ているにもかかわらず、∵をただの記号だと思って見ている人たちよりも、∵を顔だと思って見ている人たちの方が、見つけやすいということがわかりました。
※視覚探索課題とは、ディスプレイに複数の刺激 項目(探索画面と呼ばれる)を提示し,その中に あらかじめ決められた目標項目があるか否かを被験者が判断する課題である。 探索画面が提示されてから,被験者が反応キーを押すまでの時間が計測される(探索時間あるいは反応時間と呼ばれ る)。
このような実験から、脳の中で作られるものの見方や意味が、認知や知覚に大な影響を与えていると考えられているのです。
認知心理学の研究者には、脳を測る実験を行っている人もいます。
自分で脳を測らなくても、脳科学や神経に関する専門家と一緒に、MRIやNIRSという脳を測る装置などを使って研究しています。
物をどう見るのか、どう行動するのかを考えるとき、現代では脳を無視して考えることは難しいことがわかっています。
このことからも、心と脳の密接な関係が明らかになってきています。
認知心理学の研究成果は、マーケティングや商品開発の場にも反映されています。
ニューロマーケティングの場で、たとえば
「WEBページのどこに視線が集まるか」
「効果的な広告位置はどこか」
といった問題に、認知心理学が応用されているのです。
パレイドリア現象をはじめ、人間の心の働きを研究していくことは、秘密のベールに包まれた脳の謎をも明らかにしている可能性があると言われています。
今回のブログはここまでです。
お付き合いいただきありがとうございました。