このテーマの最終回になるかと思います。
死と向かい合う事は、必ずしも老後だけのことではありませんが、まず穏やかな老後を過ごすためにやっておきたいことがあると思います。
日本では、近年ACP(アドバンス・ケア・プランニング)、いわゆる「人生会議」の認知度が向上しているといわれています。
もしものときのため、自らが望む人生の最終段階における医療・ケアについて前もって考え、家族や周囲の信頼する人たちや医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組みのことだそうです。
ただ、「繰り返し話し合う」ことは簡単なことではありません。
「現場の医師や看護師が多忙で、患者や家族と十分なコミュニケーションができない」・・
そんな経験を皆さんも自身が患者として、または患者家族として幾度となく経験しているのではないでしょうか?
家族が病院に入院していても、主治医とじっくり話し合う時間はなかなかとってもらえないと思います。
また、信頼関係が構築できていない医師や看護師に自分の死について語るのは患者としても気が引けます。
一方、オランダの場合、病気になったらまずホームドクターに連絡をするという「ホームドクター制」になっているということは既にご紹介しました。
ホームドクターは、まず専門的な診断や治療が必要なのかを見極め、そうでない場合には治療を行います。
ホームドクターと患者は長い時間をかけて信頼関係を構築し、医師は患者の既往歴や性格などを十分に把握しています。
オランダで8割超の人が安楽死を容認している背景には、ホームドクター制度の存在も大きいのです。
2021年の※RTEの報告書においても安楽死を実施した医師のうち、ホームドクター(ハウスドクター)が過半数を占めています。
※RTE(REGIONALE TOETSINGSCOMMISSIES EUTHANASIE)を和訳すると「地域審査委員会」
RTEは安楽死を施した医師から報告を受ける機関である。
報告を受けたRTEはその案件が、安楽死の基準を満たしているか、否かを判断する。
RTEはオランダに5つあり、各委員会は3人の弁護士、3人の医師、3人の倫理道徳に関する専門家で構成され、合計で45人の委員が存在する。
委員は公募により選ばれ、健康・福祉・スポーツ省(VWS)と司法安全省(J&V)によって任命される。
任期は4年で2期まで可能。
ビデオメッセージなど、最期の望みを伝えておく工夫をすることも大切です。
NVVE(オランダ自発的生命の終結協会)では「元気なうちに自らの死について話し合い、家族で共有することが大事」というメッセージを掲げています。
自分の死について家族や関係者に伝える工夫については、例えば自分が元気なうちにビデオメッセージを録画しておくなど方法も有効だと言われています。
内閣府の推計によると、2025年我が国では認知症の高齢者数は約700万人、65歳以上の高齢者の5人に1人に達することが見込まれています。
自分の死に方のみならず、自分が認知症になった場合、どこで誰とどのように過ごしたいのかを、家族やかかりつけ医に伝えておくことは、なにも準備しないでおくよりも穏やかな老後を過ごす大事な手続きだと思います。
現在にあるこういったツールを活用して老いの備えをしておくのも良いのではないかと感じます。
自分が認知症になったらどうするか、自分はどのように死を迎えたいか・・・。
気が重い課題ですが、その準備を淡々と進めていこうと考えています。
さて、皆様は、どうお考えになるでしょうか?
今回のテーマも長くなってしまいましたが、お付き合いいただきありがとうございました。